コラム

合同会社の社員の「除名」とは?

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合同会社の社員が退社する方法には法定退社と任意退社の2パターンがありますが、そのうち法定退社としては以下の事由が定められています。

一 定款で定めた事由の発生
二 総社員の同意
三 死亡
四 合併(合併により当該法人である社員が消滅する場合に限る。)
五 破産手続開始の決定
六 解散(前二号に掲げる事由によるものを除く。)
七 後見開始の審判を受けたこと
八 除名

 

このうち、合同会社の他の社員の一方的な意思表示で、特定の社員を退社させることができるのが「除名」の手続きです。株式会社の取締役の解任と対比されることもあります。ただ、実際には取締役の解任と合同会社の社員の除名は全く性質が異なります。取締役と株式会社の関係は委任関係です。もしその委任契約を継続できない事由があれば、会社は株主総会の決議などを経て委任契約をいつでも打ち切ることができます。しかし、合同会社の社員は自らの財産で出資を行っています。その社員を除名、つまり強制的に社員ではなくなるようにするということは除名の対象となった社員の財産にも影響を及ぼすため、株式会社の取締役解任よりも厳格に手続きが定められています。

除名できる事由とは?

合同会社の社員を除名できる事由は会社法で定められています。

会社法 第859条
持分会社の社員(以下この条及び第861条第一号において「対象社員」という。)について次に掲げる事由があるときは、当該持分会社は、対象社員以外の社員の過半数の決議に基づき、訴えをもって対象社員の除名を請求することができる。

一 出資の義務を履行しないこと。
二 第594条第1項(第598条第2項において準用する場合を含む。)の規定に違反したこと。
三 業務を執行するに当たって不正の行為をし、又は業務を執行する権利がないのに業務の執行に関与したこと。
四 持分会社を代表するに当たって不正の行為をし、又は代表権がないのに持分会社を代表して行為をしたこと。
五 前各号に掲げるもののほか、重要な義務を尽くさないこと。

会社法 第594条

  1. 業務を執行する社員は、当該社員以外の社員の全員の承認を受けなければ、次に掲げる行為をしてはならない。ただし、定款に別段の定めがある場合は、この限りでない。
    一 自己又は第三者のために持分会社の事業の部類に属する取引をすること。

「重要な義務を尽くさないこと」は、個別のケースごとに判断することになりますが、少なくとも1~4と同程度の内容であることは必要でしょう。そして何よりも除名において特徴的なのは裁判所への訴えによらなければならないという点です。単に社員の過半数で決議するだけではなく、裁判所への訴えが必要です。この点については、どれだけ合同会社に定款自治の原則が認められていても、定款で「除名にあたって裁判所への訴えは不要」という定めをすることはできません。

除名が必要になる場面とは?

合同会社の社員の除名を行うのは、具体的には主に以下のような場面が想定されます。

・合同会社のビジネスを同じビジネスを自分の利益のために始めたこと
・該当の社員と連絡を取ることができず、実際に会社の業務遂行も行っていないこと

当事務所でも、合同会社の社員の退社にあたって本人と話し合いができないようなケースでの除名をお考えの合同会社様に対して、訴状の作成からその後の除名による登記手続き(業務執行社員の変更や出資の払い戻しのための減資登記)まで一貫してサポートしています。お気軽にご相談ください。

 

この記事の執筆者

渋田貴正
渋田貴正
V-Spiritsグループ 税理士・司法書士・社会保険労務士・行政書士
税務顧問・社労士顧問のほか、会社設立登記や会社変更の登記などの実務を幅広くを担当。その他各種サイトや書籍の執筆活動も展開中。

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