株式会社では、出資を受けた額(会社設立の場合は、発起人が出資した額)のうち、半分までは資本金に計上せずに、資本準備金に計上することができます。
会社法第445条
1. 株式会社の資本金の額は、この法律に別段の定めがある場合を除き、設立又は株式の発行に際して株主となる者が当該株式会社に対して払込み又は給付をした財産の額とする。
2. 前項の払込み又は給付に係る額の二分の一を超えない額は、資本金として計上しないことができる。
3. 前項の規定により資本金として計上しないこととした額は、資本準備金として計上しなければならない。
資本金と資本準備金の違いについてはここでは詳しく書きませんが、小規模な会社では、ほぼ違いがないと思ってよいでしょう。設立したばかりの会社で資本金と資本準備金に分ける主な理由としては、以下のものがあります。
1)消費税対策(資本金1,000万円の壁)
消費税の納税義務は、ざっくりいうと2期前の決算書上の売上が1,000万円を超えているかどうかで判断します。ただし例外的に、1期目と2期目の会社は期首日の資本金が1,000万円以上の場合は、2期前の売上にかかわらず消費税の納税義務が発生します。これを避けるために、例えば出資総額1,000万円であれば、500万円を資本金、残り500万円を資本準備金にするということが行われます。(法律では「2分の1を超えない」なので、資本金:資本準備金=7:3などでも問題ありません。資本金≧資本準備金になっていればOKです。)
会社を設立する際に消費税の納税義務を避けたければ、2,000万円未満である必要があります。2,000万円だと必ず資本金は1,000万円以上になるので、1期目から消費税の納税義務が発生します。労働者派遣事業を開始したいなど2,000万円以上の出資が必須のケースを除けば、消費税対策としては、資本金はとりあえず2,000万円未満で会社設立するのがよいでしょう。
2)法人税・事業税対策(資本金1億円の壁)
さらに大きな規模になると資本金1億円の壁があります。資本金1億円を超える場合は、事業税で「外形標準課税」といって、赤字でも発生するような税金の申告義務が発生したり、さまざまな法人税計算上の特典が対象外になったりします。資本金1億円というとかなりの規模の企業ですが、エンジェル投資家やベンチャーキャピタルからの資金調達にあたっては、「50%は資本準備金」というのがセオリーになっています。
ちなみに、「赤字でもかかる税金7万円」として有名(?)な、法人住民税の均等割については、資本金と資本準備金、その他資本剰余金などの合計額で金額が決まります。そのため、いくら資本準備金の割合を多くしても納税額は変わりません。
出資額のうち資本金に振る割合は、当事務所で増資の登記を行う際にも、重要な確認事項の一つです。
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税理士・司法書士 渋田 貴正
この記事の執筆者
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V-Spiritsグループ 税理士・司法書士・社会保険労務士・行政書士
税務顧問・社労士顧問のほか、会社設立登記や会社変更の登記などの実務を幅広くを担当。その他各種サイトや書籍の執筆活動も展開中。
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