コラム

解散や清算するときの決算と元の決算の関係

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

解散清算と法人税申告の関係

会社を解散・清算する場合には登記や残余財産の分配など、税務から登記までさまざまな対応が必要です。

そんな解散・清算について重要なポイントが、事業年度の考え方とそれに伴う法人税などの申告です。

法人税法では、事業年度について以下のように定められています。

法人税法 第14条

次の各号に掲げる事実が生じた場合には、その事実が生じた法人の事業年度は、前条第一項の規定にかかわらず、当該各号に定める日に終了し、これに続く事業年度は、第二号又は第五号に掲げる事実が生じた場合を除き、同日の翌日から開始するものとする。

1 内国法人が事業年度の中途において解散(合併による解散を除く。)をしたこと その解散の日
(中略)
5 清算中の法人の残余財産が事業年度の中途において確定したこと その残余財産の確定の日

上記のように解散や清算で残余財産が確定した場合は、その日に事業年度が終了し、法人税の申告義務が発生します。

例えば3月決算の会社が5月31日に解散し、9月15日に残余財産が確定したという場合には以下の3回の申告が必要になります。

1)3月31日(通常の申告)
2)5月31日(解散申告)
3)9月15日(残余財産の確定による申告)

このように、3回も申告を行わなければならず、非常に手間がかかります。このような手間を省くためには、解散日を通常の事業年度終了日に合わせることが有効です。特に一人社長の会社であれば、株主総会の決議も単独で行うことができます。そのため、事業活動の終了時期だけうまく調整すれば解散日を決めることもある程度裁量をもってできます。そのため、通常の申告日兼解散申告の日と残余財産確定による申告の2回だけで済ませることも可能です。

解散と清算の間に元々の決算日が来る場合は要注意

上記のように解散日を調整することでうまく法人税の申告回数を減らすことが可能です。しかし一点注意しておくべきポイントがあります。それは解散と清算の間に元々の決算日が到来する場合です。

例えばもともと8月末決算の会社が7月末に解散して、10月末に清算結了するケースです。

解散日においていったん事業年度は終了しますが、ここで勘違いしやすいのがもともとの決算日も生きているということです。上記のスケジュールであれば、7月末に解散したからもともとの決算日も7月末に置き換わるというわけではありません。上記のスケジュールだと、何も事業年度についての手続きをしなければ以下のように申告を行う必要があります。

1)7月31日(解散申告)
2)8月31日(通常の申告)
3)10月31日(残余財産の確定による申告)

上記のように、たった1か月のためにまた決算を行う必要が出てきます。上記のようなことを避けるためには解散に先だって、あらかじめ解散日に合わせて事業年度を変更しておく必要があります。

このように、解散清算は単に登記すればよいというわけではなく、税務にもかかわってくる複雑な手続きです。会社の解散清算をお考えの方は、登記だけでなく税務も理解している専門家に相談することをおすすめします。

この記事の執筆者

渋田貴正
渋田貴正
V-Spiritsグループ 税理士・司法書士・社会保険労務士・行政書士
税務顧問・社労士顧問のほか、会社設立登記や会社変更の登記などの実務を幅広くを担当。その他各種サイトや書籍の執筆活動も展開中。

関連記事

新着コラム

  1. 役員の給与には、主に月給に該当する定期同額給与と、賞与に該当する事前確定届出給与という2つが存在しま...
  2. 一般社団法人には、いわゆる営利型と非営利型という形があります。
  3. 租税条約は、国際的な所得や財産に関する二重課税を防止したり、租税回避を防ぐために締結される国家間の協...
  4. 日本では、所得税法上の「居住者」とは「日本国内に住所を有し、または現在まで引き続いて1年以上日本国内...
  5. 未成年者も発起人になれる未成年者、つまり18歳未満の者でも法定代理人の同意を得れば発起人とし...
ダウンロードはこちら