譲渡制限株式とは、その名の通り、株式の譲渡にあたって会社(株主総会など)の承認を得る必要がある株式のことです。
自由に売買が行われている上場会社の株式を見れば分かるように、株式は自由に譲渡できるのが原則です。しかし、譲渡制限を設けることで、株式の譲渡に会社の承認を条件とすることができるのです。身内や知人の出資で会社を設立した場合には、譲渡制限を設けることが一般的です。
全ての株式に譲渡制限が設けられていない、つまり1株でも譲渡制限のない株式がある「公開会社」においては以下が必須となります。
・取締役3名以上で構成する取締役会
・監査役(大会社の場合は、さらに監査役会も必須)
・取締役の任期が最長で2年
全ての株式について譲渡制限を設けていれば、上記のような機関を設置する必要もありません。そもそも一人で会社を設立する場合には、取締役会の設置もできませんので、譲渡制限は起業家が会社設立する場合は必ずついてくる定款の規定といえます。
譲渡制限がついている株式については、株式の譲渡にあたって会社の承認が必要です。(会社に黙って勝手に譲渡しても、会社が承認していない以上、会社は譲渡していないものと取り扱えます。)譲渡を承認する機関を株主総会にすることが一般的ですが、代表取締役にすることも可能です。また、株主間の譲渡については、譲渡承認不要などの規定を設けることもできます。また、どうしても譲渡したい株主のために、指定買取人という制度を設けることもできます。
定款上は、最も簡単な記載方法としては「当会社の発行する株式を譲渡により取得するには、株主総会の承認を要する。」のように規定します。
また、譲受人が株主や従業員など特定の属性を持った人については会社の承認を不要とする旨を定めることも可能です。この場合は、「当会社の株主が当会社の株式を譲渡により取得する場合には、当会社が承認したものとみなす。」などと定款に定めます。この部分も含めて登記事項になります。株主間の譲渡であれば想定外の株主が会社に関与することにもなりませんし、株主間譲渡が会社の承認が不要となるため、このような規定を設けておくと後々便利かもしれません。
一方で譲渡人の資格(例えば代表取締役)によって承認の有無を決めることは株主平等の原則に反するためできません。また、例えば10株以上のみ承認を要するといったように、株数によって承認の有無を決めることもできません。
譲渡制限は、実務上は株式の種類ごとにかけることもできます。普通株式は譲渡制限があるけど、A種類株式には譲渡制限がないということも可能です。しかし、このようにすると、「公開会社」の扱いになって、上記のような機関設計が必要になるなど、さまざまな会社法上の制約を受けることになります。
株式会社を設立する場合は、まずすべての株式に譲渡制限がかかった非公開会社での設立をするということがセオリーです。