役員の責任
取締役や監査役、会計参与、執行役、会計監査人(役員等)は会社に対して、忠実に業務を遂行する義務を負います。そして、役員等に会社のために一定の行動が求められているにも関わらず役員等がそれを怠った(任務懈怠)場合に会社に対してその生じた損害を賠償する責任があります。また、法令に違反したことは、それ自体が任務懈怠とされます。
しかし、会社法上は一定の場合に、役員の責任を免除できる旨の規定を定めています。以下でケースごとにまとめてあります。
ケース1 総株主の同意による責任の全額免除
役員等の任務懈怠による損害賠償責任は総株主の同意によって全額免除することができます。この場合の総株主は議決権がない株主も含みます。
ケース2 株主総会の特別決議による責任の一部免除
役員等について善意かつ重過失がなければ、賠償額から以下の額の合計額(最低責任限度額)を控除した額を限度に、株主総会の特別決議によって免除することができます。
役職 | 最低責任限度額 |
代表取締役又は代表執行役 | 1年間の報酬額×6 |
取締役又は執行役(社外を除く) | 1年間の報酬額×4 |
社外取締役、会計参与、監査役、会計監査人 | 1年間の報酬額×2 |
ケース3 取締役や取締役会の決議による責任の一部免除
監査役設置会社や委員会設置会社については、責任を追及される役員等に善意かつ重過失がなければ、責任を追及される役員等以外の取締役の過半数の同意(または取締役会の決議)によって、最低責任限度額まで免除する旨を定款に定めることができます。
ただし、総株主の議決権の3/100以上の議決権を有する株主が異議を述べた場合には免除はできません。
ケース4 責任限定契約による責任の一部免除
非業務執行取締役、会計参与、社外監査役、会計監査人(社外取締役等)については、社外取締役等に善意かつ重過失がなければ、定款で定めた額の範囲であらかじめ 株式会社が定めた額と、最低責任限度額とのいずれか高い額を限度とする契約を締結できる旨を定款に定めることができます。
このうち、ケース3取締役や取締役会の決議による責任の一部免除とケース4責任限定契約による責任の一部免除については、定款の定めが必要であり、その定款の定めは登記する必要があります。株主全員の同意による免除や株主総会の特別決議による免除は、会社法上認められているため登記とは関係ありません。
役員の責任免除 まとめ
役員に対する責任免除についてまとめると、以下のようになります。
免除方法 | 対象となる役員 | 免除額 | 登記や定款の定め |
総株主の同意 | 全役員 | 全額 | 不要 |
株主総会の特別決議 | 全役員 | 賠償額から最低責任限度額を控除した額 | 不要 |
取締役等の決議 | 監査役設置会社や委員会設置会社の役員等 | 必要 | |
責任限定契約 | 非業務執行取締役等 | 定款で定めた額と最低責任限度額とのいずれか高い額までの責任とする | 必要 |
ただし、総株主の同意以外については、役員の職務執行について善意または重過失がないことが条件となります。