平成29年から、東京都内でも住民税の給与天引きを徹底する旨の通知が出されました。平成28年にはさいたま市や横浜市などが同様の通知を出していましたし、ネットで検索すれば同じようなことをいっている自治体が数多くあります。
もともと給与を受け取っている人については、住民税の給与天引き、いわゆる特別徴収は義務です。(たまに選択制だと思っている方もいますが、誤解なきよう。)
つまり、給与天引きを厳格化するといっても、当たり前のことを言っているだけなのです。しかし、入退社の度に自治体に対して届出書を出したり、給与計算の度に給与天引きを行ったり、更には従業員の扶養が間違っていたなどの理由で、年の途中で給与天引き額が変更になったり、などなど。このように、住民税の給与天引きは、事務作業が煩雑で、さらに給与天引き額を間違えた時などには従業員に説明するなど事務的な負担が結構大きいのです。
このため、特に中小の事業主を中心に、給与天引きを避けたがる事業主も多く、各自が個人で納付する普通徴収の形をとろうとする事業主について、自治体も黙認してきました。
しかし、弊社のクライアントでもよくあることですが、個人で納付する場合の住民税の未納も相当なものです。毎月給与天引きされる所得税や社会保険料と違って、住民税は、ある日突然納付書が自治体から送付されてきます。(といっても、時期は6月と決まっているのですが、知らない人からすれば、いきなり数万円の納付書が送られてくるわけです。)せっかくのお給料の手取りが数割吹っ飛ぶ金額の場合もあります。こんなの払えないといって、放置したまま納期がすぎ、頭の中からも抜けてしまいます。あるいは放っておけば自治体も何も言ってこないだろうと思う人もいるかもしれません。しかし、税金の徴収は、飲み屋のツケ払いのように甘くはありません。1年ほど経過してから自治体から督促が来ることもあります。場合によっては給料の差し押さえなどの話にもなります。話がそれましたが、このように自治体にとっても個人納付の場合の徴収コストは相当です。できる限り法律の通り、給与天引きしてくれれば、このような面倒ごとも起こりません。
しかし、問答無用で全事業主義務化とすると、小規模な事業者にとって負担です。そこで、以下のケースだけに該当する人については、特別に個人納付を認めてあげましょうということになっています。
1)下記に該当する従業員数を除いて、総従業員数が2人以下の事業所に勤務する人
2)他の事業所で特別徴収されている者(副業の人など)
3)給与が少なく税額が引けない者
4)給与が毎月支払われていない者(臨時で入るアルバイトの人など)
5)個人事業主の事業専従者(家族の従業員)
6)退職者又5月末までに退職が予定されている人
たとえば、正社員2名、アルバイト1名といった会社であれば、正社員は1)に、アルバイトは4)に該当するため、全員個人納付も特別に認めてもらえます。
最近では、忘れたころに納付書が来るくらいなら、毎月天引きしてもらってすっきりしたいから給与天引きでお願いしますという従業員の方もいらっしゃいます。
いずれにしても原則は特別徴収ということは認識しておく必要があります。
この記事の執筆者
-
V-Spiritsグループ 税理士・司法書士・社会保険労務士・行政書士
税務顧問・社労士顧問のほか、会社設立登記や会社変更の登記などの実務を幅広くを担当。その他各種サイトや書籍の執筆活動も展開中。
最新の投稿
- 会社法2024年11月20日合同会社で出資の払戻しをするときの金額の限度額規制
- 税務会計2024年11月18日車両を会社で固定資産で計上する際の車検証の名義
- 商業登記2024年11月15日定款などでお金を表現する際に「金」という言葉が付いている理由
- 税務会計2024年11月13日株式の譲渡所得の確定申告とふるさと納税の現限度額の関係