合同会社の損益分配と利益配当の違い
合同会社では、毎期社員に対して損益の分配が行われます。この「損益分配」という言葉は、いわゆる配当と言葉が似ていますが、まったく別個のものとして捉える必要があります。
そもそも利益の配当とは、会社で稼いだ利益の一部を出資者(合同会社であれば社員、株式会社であれば株主)に分配することです。一方で「損益分配」という言葉には、利益だけでなく損失も分配するという意味が込められています。
会社法では、両者について以下のように定められています。
会社法 第621条
会社法 第622条
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流れとしては、まず合同会社の決算をもとに各社員に損益分配が行われて(第622条)、その後、各社員ごとに分配された利益について各社員が合同会社に対して配当を請求できる(第621条)ということになります。
損益分配の方法は定款で明示しておくべき
ここで重要なのは、間違いなく第622条の損益分配のほうです。損益分配の方法について定款に定めがない場合は、各社員の出資の価額に応じて定めることになります。定款に損益分配について定めがなければ自動的に出資の価額に応じて分配されることになります。
例えば、AとBが100万円ずつ出し合って設立した合同会社を考えてみます。決算で利益が1,000万円出たとして、Aがそのうち800万円分、Bが200万円を稼ぎ出したとします。ここで定款に定めがなければ、両者の貢献度に関わらず500万円ずつ損益の分配が行われます。そして、Bが利益の配当を請求すれば、Bは200万円分の働きしかしていないのに500万円の配当を受けることができます。(実際には所得税などが引かれるので実際に受け取る額は約8割です。)
これは利益の例ですが、損失についても同様に定めが必要です。損失の配分はあまりイメージがわきにくいですが、合同会社が損失を出した場合は、その損失額も各社員に分配して、各社員の持分が減少するということです。
利益の分配はしっかりと定款に定めていても、損失については定めていないケースも多々あります。そこで、もし定款で利益の分配だけを定めている場合は、損失も同様の方法で分配することになります。
合同会社の運営においては、この損益分配の方法を定款でしっかりと定めておくことが重要です。特に共同経営では、いつ袂を分かつことになるか分かりません。そんなときに、合同会社の退社時に定款に損益分配の割合を定めていなかったばかりに、思いのほか多額の持分の払戻しが発生してしまうということにもなりかねません。
合同会社の損益分配の方法については、定款において明確にしたうえで、各社員で損益分配の方法について共通の認識を持っておくことが重要です。
この記事の執筆者
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V-Spiritsグループ 税理士・司法書士・社会保険労務士・行政書士
税務顧問・社労士顧問のほか、会社設立登記や会社変更の登記などの実務を幅広くを担当。その他各種サイトや書籍の執筆活動も展開中。
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