現物出資が会社設立時にモノを出資するのに対して、特定の者が会社の設立を条件に、会社に特定の財産を引き渡す契約をすることを財産引受けといいます。例えば、会社が設立することを条件に、車を設立後の会社に売却する、といったケースが考えられます。財産引受けの契約を行う場合も、現物出資と同じように定款に記載する必要があり、定款に記載のない財産引受けは無効です。また、現物出資と同様に検査役の調査も必要となります。もちろん以下の場合に検査役の調査が不要となることも、現物出資と同じです。
1)定款に記載された財産引受けの価額の総額が500万円以下の場合
2)弁護士や税理士などから、定款に記載された財産引受けの目的財産について、価額が相当であるという証明を受けた場合
3)対象が証券取引所で売買されている有価証券であり、定款に記載した価額が市場価格以下の場合
財産引受けに現物出資と同じような規制がされているのは、財産引受けも対象物の価額を過大に評価することで会社に必要以上の金額で買い取らせてしまうことがあり得るからです。ちょうど現物出資の対象物の価額を過大に計上して特定の発起人に現金で出資した分以上に株式を与えてしまうことに似ています。
ちなみに、財産引受けについては、相手は発起人とは限りません。現物出資はモノの対価は株式ですが、財産引受けの場合、対価は会社のお金です。そのため、誰でも財産引受けのモノの出し手となれるのです。
財産引受けは定款に記載しないと無効です。それでは、会社を設立してから、事業用に継続的に使用するために設立前からある財産の売買契約を行うことはどうなのでしょうか?この場合、会社設立から2年以内に行う取引については事後設立と呼ばれていて、一定の制限を受けます。まず、対価として支払う財産の価額が会社の純資産額の20%を超えない場合を除いて株主総会での特別決議が必要となります。
ただし、財産引受けと異なり、事後設立の場合は検査役の調査は金額に関わらず不要です。