現物出資とは、株式会社や合同会社を設立する際に、発起人がお金の代わりにモノを出資することです。現物出資の検討事項としては、
①現物出資できるモノかどうか
②現物出資の金額はいくらにするか
ということがあります。
まず、現物出資できるモノかどうかという点から見ていきましょう。
現物出資するための、一つ目の条件は所有権を会社に移転できることです。たとえば、名義書き換えができない預金や有価証券は現物出資の対象にできません。また、ローン支払い途中で、所有権の移転が制約されている不動産や車も対象外です。
もう一つの条件は、お金に換算できること。
例えば、「労務」つまり、働く力を出資しますということはできません。実は合名会社や合資会社を設立する際に、無限責任社員はこのような出資方法も可能です。しかし、労務などはお金に換算することができないため、現物出資はできません。
その他の資産であれば、大体現物出資の対象にすることができます。
現物出資が可能であることが分かれば、次はいくらにするか、つまり評価額を検討します。もちろん自由に決めてよいわけではなく、ルールがあります。それは、時価で評価するということ。
例えば、貸付金などの金銭債権であれば、将来的に会社が回収できるお金を評価額にします。現金を出資した場合は、そのお金が会社のものになります。それと同じように現物出資でも最終的に現物出資財産を換金すればいくらになるのかということを基準に評価額を決めるのです。
このルールに照らし合わせると、主な現物出資財産に対する評価額は次のようになります。
財産 | 評価額 |
金銭債権 | 回収可能な金額 |
棚卸資産 | 通常の販売価格 |
上場株式 | 証券取引所での取引価格 |
不動産 | 不動産評価額 |
機械など | 将来的にその固定資産から生み出されるキャッシュフローの合計 |
現物出資は必ず定款に記載しないとなりません。
記載事項は次の通りです。
・現物出資をする発起人の氏名
・財産の種類と評価額
・現物出資に対して割り当てる株式の数
また、定款記載の評価額が実際の評価額とかけ離れている場合は、発起人が差額を設立する会社に対して支払う義務を負います。評価額の算出は税理士ら専門家に相談するなど、慎重に行うことをオススメします。
会社設立時に現物出資を行う場合には、以下のポイントを守りましょう。
①現物出資の価額の総額が500万円以下になるようにすること!
②上場株式など時価が明らかな有価証券を時価で出資すること!
もちろん500万円を超えて現物出資することが禁止されているわけではありません。しかし、この場合、以下のどちらかの方法を取る必要があります。
①検査役の選任申し立てを行う
検査役とは、設立する会社の本店所在地を管轄する地方裁判所によって選任され、現物出資の価額が相当であるか調査を行う人のことです。
②弁護士や公認会計士、税理士、不動産鑑定士の(発起人や設立時取締役以外)に価額が相当である証明を受ける
このいずれも費用がかかってしまいますので、普通はこの方法は選択しないです。上場株式を現物出資するには、証券会社とのやり取りなどが煩雑ですので、通常は現物出資の価額の総額を500万円以下にする方向で会社設立することがほとんどです。