合同会社では減資できる理由は限られている
合同会社で資本金の額の減少ができるケースは、以下の3つに限られています。
1)損失のてん補
2)出資の払い戻し
3)持分の払い戻し
その一つとして損失のてん補について詳しく見てみます。損失のてん補とは「資本金を資本剰余金に振り替えることで社員に出資や持分の払い戻しができる財源を回復させる」手続きです。
損失のてん補のための減資額は、合同会社の資本剰余金と利益剰余金の合計額までです。(ただし資本金の額が上限です。マイナスの資本金はあり得ないので、当然といえば当然ですが。)
会計上は、資本金から資本剰余金に振り替える仕訳1本を入れれば終わる話ですが、その手続きはいくつかの手順を踏む必要があります。
合同会社での損失てん補のための減資の流れ
まずは、業務執行社員の過半数による決定が必要です。株式会社の資本金の減少のように決議すべき事項が会社法で決められているわけではありませんが、最低でも減少させる資本金の額は決めておく必要があるでしょう。合同会社における減資の効力発生日は、後述の通り業務執行社員が決定する必要はありません。
次に債権者保護手続きが必要となります。官報公告の期間を考えて、債権者保護手続きには最低でも1か月はかかります。さらに官報掲載を申し込んですぐに掲載されるわけではなく、2週間程度はかかります。そのため、業務執行社員の過半数による決定から、資本金減少の効力発生日までには、およそ2か月間を見ておくとよいでしょう。
合同会社での損失てん補のための減資の効力発生日
株式会社の場合は減資の効力発生日は株主総会の決議で定めますが、合同会社の手続きでは、減資の効力発生日は、手続き終了日に発生する旨が会社法で定められています。
会社法 第627条
1.合同会社が資本金の額を減少する場合には、当該合同会社の債権者は、当該合同会社に対し、資本金の額の減少について異議を述べることができる。 |
この場合の手続き終了とは債権者保護手続きの終了日を意味します。つまり、合同会社では債権者保護手続きが完了したタイミングで減資の効力が発生することになります。官報公告については分かりやすいですが、個別の催告については、債権者に通常到着すべき日から1か月間なので、数日間の余裕をもっておけばよいでしょう。そして個別催告の異議申し立て期間の末日と、官報公告の満了日のいずれか遅い日をもって自動的に減資の効力が発生することになります。
合同会社での損失てん補のための減資の登記
損失てん補のための減資は、資本金の減少を伴います。そのため、登記手続きが必要となります。登記は上記の効力発生日から2週間以内に申請する必要があります。
添付書類は、
1)業務執行社員の過半数の一致を証する書面
2)債権者保護手続きを行ったことが分かる書面
3)資本金の額の計上に関する証明書
4)司法書士に委任した場合は、委任状
です。
登録免許税は3万円(減資の額にかかわらず定額)です。
ちなみに、損失のてん補のために減資を行った場合は、定款の変更は不要です。出資の払い戻しと違って、過去の出資額そのものが変動するわけではないからです。
当事務所では、登記手続きだけでなく、債権者保護手続きについても代行を行っております。合同会社での減資手続きをお考えの方はぜひご相談ください!
この記事の執筆者
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V-Spiritsグループ 税理士・司法書士・社会保険労務士・行政書士
税務顧問・社労士顧問のほか、会社設立登記や会社変更の登記などの実務を幅広くを担当。その他各種サイトや書籍の執筆活動も展開中。
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